2024/12/24 10:00

この散文が掲載されるのは、12月24日クリスマスイブの午前10時。
だから、ということもあるけれど、何となくもうこの歳になって、
何だか書いてみたくなったから、クリスマスのことを徒然と書いてみた。
そもそも、こんなことを書けるようになった自分が面白い、とも思う。
10才の時のクリスマス(確か…)に、ミズノ青カップ(軟式野球用シリーズ)の
オールラウンドプレイヤーというモデルのグローブをもらった。
内野でも外野でもなく、どこでも守れるという汎用性のあるモデル。
中学の野球部では内野手だったけれど全く気にせず使っていた。
使い続けて自分の手のような感覚になるまで使い込んだ。
かといって、抜群に上手いわけでもなく、オールラウンドプレイヤーのように、
器用な選手ではなかったし、最後の夏はレギュラーになることも出来ず、
本格的に熱心にやった野球は中学生最後の夏が最後になった。
けれど、大人になっても事あるごとに草野球に誘われて野球はしてきた。
今でも時折、近所の球技専用の公園でひとり壁に向かって投げている。
もちろん、グローブはミズノ青カップオールラウンドプレイヤーを使い、
というより、他のモノを使ったことがないし、46年間使い続けている。
かなり草臥れてきたグローブを見ると、子供の頃の煮え切らない自分を思い出す。
確か中学1年の時、すでに社会人として働いていた年の離れた姉が、
食後のデザートに家族で食べるクリスマスケーキを買ってきてくれた。
何だか嬉しく、食事もそこそこに小躍りしながら冷蔵庫のケーキを取りに行った。
静かに取り出し、そーっと、こたつのある温かな居間に運んだ。
けれど、コケた。運ぶために開けておいた襖の敷居に蹴躓いた。
大事に持っていたケーキ箱が飛んだ。
箱の中身は、イチゴ混じりの生クリームとスポンジの山になっていた。
苦笑いしながら、切り分けることが出来ず、棒倒しのように山を崩しながら、
家族でつっつきながら食べるクリスマスケーキ、けれど何だか美味しかった。
その後はあまりなく、10代の終わりには焼鳥屋かスナックで過ごした。
それはそれで、クリスマスの記憶だけれど、そこにはよく行っていたから、
特別なクリスマスの記憶というものは、少しもない。
社会人になると、その景色とそのなかでの多忙なクリスマスの記憶しかない。
お付き合いした女性もたくさん(!?)いたからそれなりに、クリスマス的なことはした。
それぞれの女性には申し訳ないけれど、記憶に残っていない。
ただ、本当のカソリック信者の家庭に育った女性には大切なことを学んだ。
だからなおのこと、浮わついたクリスマスイベントは避けるようになった。
30代になって海辺の町に暮らした時は、大晦日までみっちり働いていたから、ない。
大晦日を無事終えた翌日、元旦からはじまった冬休みは眠ることなく、
早朝から成田空港に行き、JFK空港に飛び立っていた。
元旦フライトで訪れるニューヨーク・マンハッタン。
機内では2回目の年越しとお屠蘇をいただいて、到着するのは元旦早朝。
ニューイヤーズデイのマンハッタン市内はとても静かて切れるような寒さに包まれ、
日本と違い、2日から動き出すため、元旦だけの休みを街全体が迎えていた。
その静かで冷たい町を散歩しながら眺めるクリスマスデコレーション。
年明けしばらくは残されているその景色を楽しんだ、後れ馳せながらのクリスマス。
あー、これがクリスマスなんだろうな、と実感したクリスマスだった街。
数回続けた、12月24日ではないけれど、楽しいクリスマスの思い出。
東京銀座のクリスマス。12月25日の深夜零時を過ぎると変わるショーウィンドウ。
夕暮れ過ぎて夜になると、サンタクロースの帽子を被り、声を上げながら、
クリスマスケーキの売り尽くしに励むケーキ屋の販売員たち。
また、サンタクロースの衣装を着た「社会鍋」の寄付を集う人々。
深夜零時のシーズンチェンジの大躍動を見たいがために、
酒を飲んで待ち、松飾りに変わる町を眺めたクリスマスの記憶、
家族を持つと自分以外のクリスマスに当然なる。だから、ここでは書かない。
けれど、もしかしたら一番大切なクリスマスの記憶なのかもしれない。
自分だけを振り返る。いつも気忙しく、多忙のなかで迎える年の瀬。
年を越せるかどうかということもあった。だから、何だかざわざわした記憶、
表向きは穏やかでも内心ではそうはいられない時が大半を占めていた。
だからやっぱり、色々な意味で節目になることには間違いのないようで…。
今年もまた、クリスマスを迎えた。あと5回のうちの1回が終わる。
こんな心持ちていられること自体が面白いし、意外に楽しんでいる。
篤い信仰心を持つ人々にはとても大切な日で異国の宗教的行事でありながら、
このようなシーズンイベントに仕立て上げた、誰かは知らない先人に感謝している。
クリスマスマーケットやデコレーションやイルミネーションが見えると、うれしい。
とにもかくにも今日は12月24日火曜日、クリスマスイブ。
何となく町行く人の表情が穏やかに感じられる、そのこともまた、うれしい。
心休まる、穏やかで和やかな日でありますように。
令和六年 何だか今年はクリスマスのこと
栗岩稔