2024/02/20 10:00


好きなコマーシャルがある。

15年近く前からシリーズ化しているそれ。
その名も「大人エレベーター」
この春も始まった。

今年は奥田民生さんが出演している。
数年前に少しだけ、ご一緒させていたこともあって、
親近感を持ちながら今年も楽しんでいる。
58才になった民生さんがいるフロアは58階。
そこに、俳優の妻夫木聡さんが訪ねて語り合う。

はじめから出演している妻夫木さんが、
毎年違うフロアに訪ねていくと、
その数字と同じ年齢の人が、いるべき場所に、
そのスタイルでいて、ビールと共に交わされる会話。
そこにあるテーマはずばり「大人」
そんなコマーシャル。

40才を過ぎて、初めてこれを見た時、
これだ、と思った。
これをやりたい、と思った。
もちろん、エレベーターに乗るわけはなく、
酒場でやりたいと思った。

自分が20代はじめから、
(あ、うそです。10代の終わりからです、はい…。)
通い続けてきた酒場。
そこで出会い、見聞きした「大人」を伝えたい、
自分がエレベーターの上のほうの階数になった今、
今だから出来る、と思った。
著名人でも有名人でもない市井の大人の良さ、
そこから得た学びを自分なりに次の世代に伝えたい。
酒のことはもちろん、映画、音楽、服、その立ち居振舞い。
自分が良いと思ったことを伝えていきたいと思った。
どこの歴史書や小説にも出ていない、一般の人たちの物語を。

あれから15年が経った。
今でも変わらず、もっと強く持っている。
何が誰に、どう伝わったのか、その答えはない。
ないけれど、次の世代の誰かが何かを、どこかで、
こんな人たちがいた、こんなことがあった、こう思った、
そうなれば良いと思っている。

この春から「酒場でラジオ」の新シリーズがはじまる。
世代の違う様々な生の声を伝えられたら、と思う。
もちろん、生きた酒場は続けていく。

超高層ビルの高速エレベーター最上階ほどの年齢の今、
もっとたくさんのことを伝えられると思っている。
自分のことではない「何か」を。
それを伝えられる「大人」でいたい。
お世話になった年長者のみなさまへの感謝を込めて、
もうこの世にはいない「大人」の物語を伝えていく。
そんな役目だと思っている。


同世代で近しく長らく、
お付き合いさせていただいているみなさまへ。

もう少しで還暦を迎えますね。
みなさまが生きてきた、それぞれのフィールドで、
これからもますます、次の世代に伝えませんか。
私は酒場で言葉で伝えます。
何が伝わるかは全くわかりませんが、
何かが伝わると思っています。
だから、私は最期まで現場にいます。
だから、時には遊びにいらしてください。
共に「何か」について語らいましょう。
そんな時間を酒場で、
ご一緒出来たら幸いです。
だから、それまで、
くれぐれもご自愛のほどを。

40代のみなさまへ、
次はみなさまの番、です。

令和六年 あれ、うるう年だった!の朝に。
栗岩稔