2024/02/06 10:00


立春を迎えて新しい年がはじまった。

七十ニ候では東風解凍、はるかぜこおりをとく。
氷を解かすどころか厚みを増すような寒気に満ちている。
暖冬、暖冬といわれ、春めいたり、冬らしかったり、
朝晩の温度差が激しかったり、冬に雷鳴轟いたり、
急激な変化に身体がついていけていないことに気付く昨今、
皆さまもお身体にはくれぐれもご留意のほどを。

この寒気を持ち込んだ南岸低気圧の南岸、
どうしても南岸が弾丸と聞いてしまう。
南の岸とわかっていても弾丸と思い込んでいる。

世界中で弾丸が飛び交っているからかな、とも思う。
国内外問わず一市民が弾丸を放ち一市民を殺しているし、
世界のいたるところで弾丸どころかミサイルが人を殺している。
人権活動家でも平和主義者でもないけれど、
一市民として思うところがたくさんありすぎる。

だから、ローマ帝国が何故滅びたのかが最近気になる。
紀元前からの古代ローマは共和政から帝政まで何百年も続き、
現代の法律の基になるローマ法を持ち、
今でも残る建造物や美術、工芸品の技術を開発し、
一日にしてならずと時間をかけて大切に作り上げてきた国が
何故崩壊して滅亡したのかを改めて考えている。

人民が代表者を選び政治を執り行う共和体制をとったローマ。
広がり過ぎた領土内では内乱が起こり分裂の危機にさらされ、
かの有名なカエサルの軍事的な力により支配するようになるものの、
政府内別派閥からの反発で独裁体制の志半ばで暗殺され、
その後も幾多の戦争と殺し合いを経て、
これまた有名なオクタヴィアヌスが権力を掌握し、
初代皇帝となり帝政ローマとなる。

広大な領土に暮らす人民が信仰していた多神教。
それぞれの地域に伝わる神話をもとに多くの神を信じていた人民、
そこに、ユダヤ教から改宗したキリスト教が現れる。
一神教とするキリスト教徒は皇帝よりも神が優位な存在であると考え、
カルト集団として迫害されようとも国中に広がっていく。
文字になった教えを手にしたことで更に広がったキリスト教社会。
その力を脅威に感じる皇帝は弱体化した帝国の味方につけようと、
信仰の自由を宣言し、自らも改宗する。
そして、首都を東部国境を守る戦略的な位置でもある、
コンスタンティノーブルに移し、東のローマ帝国となる。

皇帝は軍隊を金と賄賂で味方につけ、
政治を取り仕切る閣僚からは不信感を抱かれ、
政府としては人民に目を向けることも少なくなり、
経済的にはインフレを引き起こし、物価が上がり、
困窮した人民が暮らす荒廃した町には疫病が蔓延し、
金で雇われた傭兵たちは忠誠心の欠片もなく、
国境を守ることなくゲルマン民族の侵略を許す。
そうして国力が弱体化していき
何百年も続いたローマ帝国は衰退し滅亡する。

先生っ!あってますか?聞いてますか?
生徒のこと、きちんと見てますか…?

当時も今も、諍いの絶えない世界。
公海であるはずの海を自国の領海としたり、
領土を広げることに重きをおいたり、
共存していたはずの民族、宗教間で対立したり、
独裁体制をとるための金満政治だったり、
世界中に広がった疫病だったり。
現代でも目にし耳にする同じ事柄ばかりだし、
やっぱり繰り返し続ける人間の歴史だな、と…。

いつの日にか…、
世界中が光溢れる春になりますように。

残念ながら…、
生きている間には見ることはないだろうけれど。

令和六年 春の風待つ冷たい立春に
栗岩稔