2024/01/23 10:00


古い写真が出てきた。

25年前の自分を見つけた。
自分の写真というものをほとんど持っていないので、
少し恥ずかしく、少し嬉しい発見だった。
髪が短い。肌に張りがある。日焼けしている。
銘柄は違ってもタバコを吸っている。
自然な生え方に抗った髭が黒い。
今でも着ている服なので体型は変わっていない。

けれど、歳を取った。
しみじみ感じることが出来る自分に出会えた。

この時もやっぱり酒場にいる。
海辺の町の小さな酒場で「酒番」と名付けてもらった。
この頃に目の前に広がる酒場の景色の中の格好良いおじさんたち。
あんなおじさんになりたいと思ったあの頃。
大人の遊び場を作りたいと強く思った。
人が集まる街の片隅で作ると決めた。

当時のおじさんたちの年齢に肩を並べた今、
銀座の端っこの町で、やっぱり酒場にいる。
格好良いかどうかは別にして…。
酒を預かる番頭「酒番」と自ら宣言して、
大人の遊び場になる時間を作っている。
服を学んで、ジャズおじさんになって、
モノを愛でることを学んで、様式美を学んだ。
思い描いたカタチに近づいたような気がしている。

設計図のような事業計画のような、きっちりしたものではなく、
50代の自分自身を思い描いて、足りないモノやコトを追加してきた。
30才の頃に思った自分になれているかどうか、
それはまだわからないし、自分で答えは出せない。
けれど、まだまだ、もう少し、もう少しだ、と。
自分の還暦の姿を楽しみにしている。

つい先日、大人の仲間入りを祝う日に、
長年お付き合いいただいている男性と話した。
同い年の彼が言っていた。
還暦までの生き様だから、今を生きる、と。
同じことを思い、時間軸で自分を描いていることに、
違うフィールドながら並走している感じが嬉しかった。
夕暮れ時から日が落ちるまで、誰も来ない酒場で語り合った。
良い時間になった。

自然界には抗うことは出来ず、一瞬で生命を失う人類。
小さな小さな人間社会で今を生きることの大切さを感じ、
今という時間をひとつひとつ積み重ねられることに感謝している。

町には節分会の知らせが貼り出されている。
そろそろ立春、新たな一年がはじまる。

令和六年 何もないところで蹴躓いた寒い日に
栗岩稔

追伸、今、ラジオから流れている Take it to the Limit/The Eagles
よく聴いていた海辺の町に生きたあの人を思い出す