2023/11/28 10:00


夏が終わり、秋もなく、冬を迎えて11月が終わる。

今年もまた、あっという間に12月を迎える。
いつもは記憶に薄い11月というものが、今年は違う。

1970年4月にポール・マッカートニーが解散を宣言、
1974年12月に4人が解散に合意、
1975年1月に正式に解散
1980年12月にジョン・レノンが射殺
2001年11月にジョージ・ハリスンが病死。

4人揃っていないビートルズの「新曲」に耳を奪われた。

思いもよらない凶弾に倒れたジョン、
聖戦という名の狂気にビルが崩壊したあの日から、
世界中で流れたジョンの「イマジン」を病床で聴いたジョージ。
今、この世にいない二人にはどうなんだろうと思う。

「for Paul」と書かれたデモテープに残された一曲、
これまでも、いくつかの楽曲が発表されていたものの、
録音状態が悪く発表には至っていなかったその楽曲を、
今だからこその整音技術とAIを駆使して創り上げられ、
今、この世にいない二人まで再現されて生まれた「新曲」
「Now and Then」

音楽の素晴らしさと現代技術の進歩に感動すらするものの、
何かが引っ掛かる。

ジョンはどう思っていたんだろうか。

発表しなかった理由がそこにはあるだろうし、
単純に未完成だから、という理由かもしれないし…。
託したものであるからその意思はあったのかもしれないし…。
どうなんでしょうかね、そのあたりは。

1970年1月にアップルスタジオの屋上でのラストライブでは、
その後にバラバラになっていく4人がそこにいた。
あの時の4人、壊れていくビートルズにはアビーロード以降、
新曲を発表する意思はなくなっていたのかも、とも思うし…。

ビートルズファンのみなさまには様々な意見があるんでしょうが、
ジョン・レノンファンの私としては疑問が残りますね。

我々には計り知れないビートルズといものの何かがあって、
今の時代だからこその発表なのでしょうけれど、
芸術家でもアーティストでもない私が言うのもなんですが、
もし、私の死後に残されていた何か、こういう文章みたいな、
そんなものが私の意思とは関係なく発表されたとしたら、
私はイヤ、です。
否定をしているわけではなく、もちろん好きだからこそ、
ジョンはどう思うんだろうか、です。

ラジオで「新曲」を聴きながら思い出したことがある。
アーネスト・ヘミングウェイの自殺後に発表された「エデンの園」
自身の推敲がされることなく発見された数千の原稿、
それを優秀な編集者によって推敲され発表された遺作。
全てを幾度となく読んだヘミングウェイの作品の中で、
初めて途中で読むことを止めてしまった「遺作」という新作。
何だかあの時を思い出しながらラジオを聴いた。

あの誰もいない屋上のライブで中途半端に終えて、
約50年の月日があっという間に流れた今、
きちんと終わりにするための「新曲」なのかなって。
そんなこんなを思う11月、もう今年も終わります。
あっという間に…。

だから、今とそれから、なのかしら。

令和五年 今年は記憶に強く残る11月の終わりに
栗岩稔