2023/11/21 10:00


ドラえもんが好きだった。

というより、今でもコミックス版は好きかもしれない。
実家には未だに23巻までが処分することなく置いてあるし…。
中でも、好きな話は第10巻のタイムマシンふろしきの回。
のび太が見つけてきた化石にタイムマシンふろしきを使う。
その中で時間が進んだ化石から恐竜の赤ちゃんが生まれる。
ピー助と名付けられた恐竜の子供を大切に育てるのび太には、
いつしか訪れる大きくなりすぎたピー助との別れが待っている。
という映画化もされたお話。

そして何より好きな話は第6巻の最終話「さようならドラえもん」
未来の世界に帰らなければいけないドラえもんを心配させないため、
のび太は、いつものようにジャイアンにいじめられながらも、
一人で、ドラえもんに頼ることなく立ち向かっていく。
そして、とうとうジャイアンは負けを認めて詫びを入れる。
夜遅くなっても帰らないのび太を心配したドラえもんは、
夜の誰もいない空地でボロボロになったのび太を見つける。
そして、二人は夜更けの町を一歩ずつ涙しながら家に帰る。
のび太が眠りにつくまで、布団の傍らで涙ながらに見守るドラえもん。
朝になり、ドラえもんが押し入れにもいないことに気付いたのび太は、
朝日に向かって強くなることを誓う。
という感動的な友情物語。
最終回と予定されていた回に相応しい内容だと思った。

ところが、続きはないものと思っていた矢先に第7巻が発売された。
人気が出ていたからだということは理解出来たし、
そこには大人の事情もあるんだろうな、とも考えていた。
しかし、兎にも角にも、純粋に、うれしかった。
満を持して手にした第7巻のはじまりは「帰ってきたドラえもん」
そりゃ、そうなるよな、と思いながら読んだ話の中身は。
ジャイアンやスネ夫に相変わらずいじめられていたのび太。
ある日、二人にドラえもんを町で見かけた、と聞かされる。
それを信じたのび太は町中を大喜びしながら探し回る。
しかし、ドラえもんの姿はおろか気配すらないことに気付き、
ようやく二人に騙されたことを知り、酷く落胆するのび太。
どうしても許すことが出来ないのび太は、ドラえもんが帰る前に、
どうしようもなくなった時のために残していった箱を開ける。
その箱に入っていたのは「ウソ800(エイト・オー・オー)」という液体。
これを飲んで口にしたこと全てが本当のことになるという薬。
のび太は「ドラえもんが帰ってきたなんてウソは許せない」と呟く
その効果で二人をやり込めたのび太は空しさを感じなら帰宅する。
そこで待っていたのはドラえもんだった、という話。

良かった良かったと思う反面、どこか無理矢理感を覚えたものの、
まあ、結果的には第10巻でピー助にも出会えたし…。
そうして、私のドラえもんは成長とともに第23巻で終わりを迎えた。

ところで、「ウソ800(エイト・オー・オー)」
大人になって「嘘八百」だと突拍子もなくわかった時には、
そのネーミングセンスに、町の中でひとり感心していた。

嘘を並べ立て、出鱈目であることを表す嘘八百。
漠然と数が大きいことを表す八百。
江戸八百八町、八百屋、八百長、そして嘘八百。
八百万の神々がいる日本では、
神様に対して失礼にあたるからと「万」をつけなかったとか。
縁起の良い、末広がりの八を付けときゃ目出度い、ということかな…。

でもでも、なぜなぜ、嘘八百と八百長に八?
ドラえもんに聞いてみるか…。

ところで、あなたの嘘はいくつありますか?

令和五年 街に偽りのもみの木が溢れる頃に
栗岩稔

追伸、聞くんじゃなくて頼もうかしら。
もしもボックスで嘘偽りのない世界に、って。
無理か…、そんなこと…。