2023/11/07 10:00

11月3日が過ぎた。
自由と平和を愛し文化を進めるという趣旨の下、
明治天皇の誕生日でもあった11月3日が文化の日、
そう制定されたのが戦後間もない1948年。
とは学校で学んだ記憶が全くない。
万歳しながら街を行く市井の人々の挿し絵とともに、
日本国憲法が公布された日が文化の日だと学んだ。
国民の大半が憲法そのものを理解出来ていない中、
半年後となる5月3日に施行された。
今では憲法記念日とされている5月3日に制定された理由は、
5月1日は労働組合のためのメーデー、
5月5日は端午の節句で男子のための武の祭りであるから、
男女平等の理念に反し、平和国憲法に似つかわしくない、
ということから定められたとのこと。
5月4日は?と思うものの、今ではみどりの日となっている。
改めて、戦後復興の困難な時期に政府関係者も苦心したのかな、
などとも思うものの、何だかモヤっとした感覚が拭えない。
そもそも、学校で学んだこと全てに記憶が曖昧なことを後悔しながら、
長年答えが見つからずに放っておいた疑問もある。
文化って何?
今の時代の利便性を使って自分なりの答えを探してみた。
文化とは。
○世の中が開けて生活水準が高くなっている状態、文明開化
○人類の理想を実現していく精神の活動
○技術を通して自然を人間の生活目的のために
役立てていく過程で作られた生活様式とその表現、
人間によって創造された人工物
○社会において後天的に学ぶべきもの全般
言語、宗教、音楽、料理、絵画、文学、服飾、法律
これらが文化
あれ?酒も、ですよね?
あの時に遊興する場だと決めた政府関係者のみなさま、
遊興する場だと自ら認めて、その扉を閉ざしたみなさま、
遊興、ではないですよね?
どうなんですかね?
今ではどう思っていますか?
私は酒も文化だと思っています。
もちろん、そうではない酒の場もあるでしょうが、
私が生業としている場は文化でありたいと思っています。
そのために日々精進しています。
酒は、人類が言語を使って通じ合えた始めの頃から、
宗教的な儀式の場で、衣服を身につけるようになった頃から、
作られ、飲まれていたものだと考えています。
古代壁画にも残されているその様式、
きっと、その場には奏でる音楽もあったでしょうね。
だから酒の文化はなくならない、そう考えています。
人類がこれから先どんな時代を迎えることになろうとも、
そうであると思いますし、そうであって欲しいと思います。
それは、まだ記憶に新しい歴史でも証明されていると思います。
もうだいぶ前、小学生の頃のことです。
太平洋戦争の戦地で目が潰れることも覚悟して、
飲用ではないアルコールを飲んだ話をしながら、
自ら自転車のカゴに積んできた一升瓶をコップ酒で、
懐かしむようにしていた叔父さんの姿を思い出します。
楽しそうに嬉しそうに、本物は旨いよと言っていた姿。
昼から酒を飲み、よく喋るうるさい叔父さん、
そんな風にしか思っていなかったあの頃。
今はもっとたくさん話を訊いておけばと…。
遊興とは遊びに興じること。
もちろん、遊びといえば遊び、なのかもしれませんね。
ただ、酒場とても大切で何かが生まれる大切な時間、
私はそう思います。
人間の理想を実現していくための大切な精神活動だし、
自然が生み出した植物や穀物や水を使って作り手が、
人間が求めるものに造り上げ、
目の前にいる人間のために、作り手でもあり酒を預かる番頭が
その技術を使って創り上げる酒。
その酒の場や表現された時間を人間の生活のために役立てる、
学校で、ではなく、大人が後天的に学ぶべきもの。
それが酒の文化、そう考えています。
なんてことを改めて考える、
季節感を失いかねない11月初旬です。
令和五年 長年人類が培ってきた文化を想う
栗岩稔