2023/10/24 10:00


もみじや蔦が紅葉し、農作物が収穫され、

夜、大気中で冷やされた露が朝になって降りてくる、霜降を迎えた。
もちろん、都会ではそんなことを露ほどにも感じないものの、
朝晩の冷え込みや引き締まった空気に冬のはじまりを感じる。

そんな街中にある小堀遠州作と言われる庭園で、
一部分だけ赤く染まるもみじを見た。
庭師曰く、
「ストレスを感じているんですよ、もみじも」
もみじもストレス、人間もストレス。
暑すぎた夏や秋を過ぎれば当たり前のように感じるストレス。
人類がその要因のひとつども言える気候の変調に、
樹木も人間も変調をきたしているこの世の中、
この先どうなることやら、と改めて考えさせられた。

ストレス、ストレス、今も昔もこの先も。
この道を選んだきっかけになった憧れのバーのマスターが、
「栗ちゃんね、ストレス、ストレスって言うけどね、
ストレスだって思うから、ストレスなんですよ。
そう思わなければ良いんですよ。
今どきは何でもかんでも、ストレスという言葉でまとめちゃうけど。
大切なのは、その原因を考えれば良いんですよ。」
と言っていた。
それ以来、ストレスと捉えずに、考えて考えて対処してきた。
必然の成り行きとして、自分事として、自身の業として。
もちろん、胃を痛めたり、肩が凝ったり、頭痛がしたり。
消化しきれない時には、落ち込み、沈み、
飲み込んだり、吐き出したり。
受け入れるために酒場に赴き、
酒と向き合い、自分と向き合い、飲み過ぎたり…。
たくさんたくさん、そんなことをしてきた。
俗に言う、ストレス発散の酒に後悔することあった。
そんなモノはダメだと気付き、悪い酒よりも良い酒、
そういう酒に向き合えるようになった。

昨夜、50才を目前に控えたおじさん、
高校時代の同級生3人が楽しそうに呑んでいた。
当時のアイドルや部活や女の子の思い出を語り合っていた。
とても和やかで笑顔溢れる良い酒の景色、
そんな酒場を振り返りながら帰路についた午前1時。
強く吹き荒れる北風で冬のはじまりを全身で受け止めた。

久しぶりの休日に寒さで目覚めた早すぎる朝。
日頃必ず、眺め確かめる柿の木にあるはずの、
色付きはじめた柿の実がひとつもなくなっていた。
黄色くなりかけた柿の葉だけが風に揺れていた。
自宅のベランダには、
遅過ぎる朝顔が青い花を咲かせて北風にゆれていた。

ストレス、ストレス、柿ももみじも朝顔も。

令和五年 冬がはじまる北風に揺れる柿の木に
栗岩稔