2023/10/03 10:00


何をされているんですか、と聞かれることがある。
聞いた人を見て、答えを少しずつ変える自分がいる。
何だかな、と思いながらも、すべてを答えたらきっと、
ますます解らなくなるだろうな、とも思う。

昼間は、経営者を中心に個人のスタイリング全般、
言うなれば、よろず相談屋のようなことと、
大手コンサルティング会社のアドバイザーを不定期に。
今、こうして書いているブログを掲載している、
オウンドメディアを通したモノやコトの発信、
不定期に公開されるインターネットラジオでのパーソナリティー。
そう言えば、昨夏はオリジナルシャツの開発と受注販売をしたし、
今秋もそろそろ次のシリーズが出来上がってくる。

夜はもちろん、生業としてきた酒場の酒番。
先月までは流しの酒番(!?)として、東京の街角にいた。
最終到達地点は、珈琲屋のオヤジ。

我ながら一体何者なんだ、と思う時もある。
ただ、自分なりには一切ぶれることなくいるつもりではあるものの、
ひと様から見たら、なんだ、それっ、て思うかもな、とも思う。
でも間違いなく言えるのは、栗岩稔であること。
栗岩稔という生き様がごっちゃ混ぜに見えるだけかな、と
色々な材料を混ぜ入れて煮ることで出来上がるごった煮、みたいな。
決して何とか映えしたり、きらびやかなモノではないものの、
地味だけど、それぞれの個性がひとつひとつ引き出されて、
ひとつのまとまったモノになる、それが、ごった煮。
とても良い料理だと思うし、大好きな一皿でもある。

いやいや、ごった煮の話しではなくて、何者ですかって話し。
今これからの時代は何者かではなく、個の力、人間力、
そういうもので生きて行く時代だと考えている。
決して、オレ様にはならないように、傲り高ぶらず。
個人個人の個性や味わい、その力が発揮されて、
その個がまとまったら大きな原動力にもなるし、
存在そのものになっていくと思う。
それが個人と集団の関係性でも一個人の存在でも。
やっぱり、ごっちゃ混ぜのごった煮、ですね。
ごった煮の類語には、百鬼夜行や繚乱もあるらしく…。
夜中に出没して歩き回る化け物というのはさておき、
入り乱れ、咲き乱れ、散り乱れるほうが良いかな、って。

そんなごった煮の「GOTTA」を冠しているアトリエ、
GOTTA STUDIO が九段坂の天辺、靖国神社に面したビルの二階で
千鳥ヶ淵を見下ろし、桜の季節にはまさに繚乱の美しい景色が見られ、
百年近くそこにあって、激動の日本を見守っきた場所にある。

そこで一年と半分、月に一度だけ開催していたGOTTA BAR を終えた。
BAR というより SALON のような時間、毎回人が行き交い、
話しの花が咲く素敵な空間だった、と勝手に思っている。

これまでお目にかかったみなさまへ、
ありがとうございます。いつかまた、どこかで。

GOTTA STUDIO の主は竹田さん。
初見の印象は、おっさんみたいな女、だった。(すみません…。)
懐かしい感じがしたし、どこかで共鳴もした。
聞けば、二十年以上も編集者として最前線にいて、
独立した今は、それぞれの個の力を行き交わせ、
大きな力になって咲き誇るようにする仕事をしている、とのこと。
仕事も含めて、その姿勢に興味を覚えた。

その彼女が、世がコロナ禍の重たい空気に支配されていた中で、
新たな一歩のための場を借りるか否か、という話を聞かされた。
即座に借りたら良い、借りなさい、ぐらいに言った。
無責任だと言われるかもしれないものの、人は大概、
他人に相談の言葉を発した時点では心持ちは決まっていて、
ただ勇気がないだけだと、常日頃考えているからなおのこと、
その前向きな姿勢の背中を押した。

その数日後に契約したと言うその姿がどこか、
若干前のめり気味になったような…。
そんな中でも時間があれば顔を出し教えてくれる改装の様子。
その姿とその臨場感で、自然と愛着が沸いてきた。

そんな彼女のお気に入りは、
厳選されたモルトウイスキーをブレンドしたモンキー・ショルダー。
近くで仕事の前には必ず立ち寄りソーダ割りを二杯、
ガソリンを給油するように引っかけて出かけていった。
思わず、いってらっしゃい、と声をかけたくなるほどに。

そんな竹田さんの GOTTA STUDIO 。
いつしか、月に一度はいることが出来るようになり、
そこにいる時間が嬉しく思っていた。
その月に一度の大切な時間を終えた。
それぞれのおわりとはじまりのために。

ラストランのための一歩目がはじまる。
しばらくは、立ち止まることもないかもしれないけれど、
残り五年のラストランに向けての、おわりとはじまり。

竹田さん、また路地裏の酒場で話しましょ。
モンキー・ショルダーは用意しておきますから。
ではでは、竹田さん、ありがとう。また。

令和五年 煮物が美味しくなる美しい秋に
栗岩稔

追伸、三匹の猿は決して、
「見猿、言わ猿、聞か猿」ではありません、悪しからず。