2023/09/13 10:00


◎仕事への愛

CU: さっきYUさんが言っていた気を回すとか、相手のことを考えて仕事の段取りをつけるとかですけど。そうすると、自分の愛が減りません?考えているつもりでいても、熱量が減るっていうか。すごい考えているんだげど、心が冷静になって冷めていく感じ。

S: 仕事の種類が違うかもしれないけれど、私は愛情が感じられない仕事はできなくなってきたかな。受けないこともあったり、断ったり。

栗: 特に建築って、愛していないとできない仕事なんじゃないのかな。人の居場所として。

T: 愛のない仕事もやらなくちゃ、みたいな時期もあったけど、年を重ねるうちにできなくなってくるよね。

S: 大きな意味では、建築自体を愛しているから。建築家だけの集まりなんかに参加すると皆が幸せそうだしね。私も、もちろんそうだけど。仕事の時は関わる人をよく見るようにしているし。

T: プロジェクトとしてってことですよね。ひとつのプロジェクトを動かすために、さまざまな専門家を束ねたとしても、その中心になる立場の人に愛がない時には、上手くいかなかったり、適当にまとめて終わっていっちゃったりすることもある。逆に熱量がある人たちが愛がない人を動かしちゃったりすることもあるよね。仕事の上では愛のような熱量が関係している気がするね。

F:YUさんは仕事に対してドライに考えているように聞こえますけど、実は仕事に愛があって、物事を円滑に進めるようにされてますよね。

自分の会社はベンチャーだから若い子らがいきり立っていることが多いですね。

俺がなんとかしてやる、みたいな。でもその割りには上手くいかないことが多くて…。

仕事に対する愛情か不足しているような。仕事に愛があります、とか言葉にするのは簡単ですけどね。何なんかなって思いますよね。仕事が好きなことと仕事に対する愛情って違うのかなって。

がんばります!みたいな感じを出している人が多くて、自分にとって今はそれが課題ですね。表現の仕方っていうか…。もちろん仕事は好きですけどね。

YU: 仕事っていうと栗岩さんの酒を作る時の話も聞きたいですね。

栗: バーテンダー、ね。なんだろうね。ポリシーはたくさんあるけど。知り合いに聞いた話だけど、高齢のバーテンダーの講義を聞きに言った時に、そのバーテンダーは「おいしくなーれ、おいしくなーれ」って思いながら作るんだって。で、それがすごくおいしいらしくて。若い時に聞いても解らなかったかもしれないけど、今は解る、かな。例えば、今YUさんが目の前にお客としていてYUさんのために酒を作るとしたら、その時は、YUさんのために酒を作ることだけを思って作るかな。それが伝わる感じなのかな。愛かどうかは別にしてね。今日だって、アイスコーヒーを作る時に、今日はあの人たちが来てくれるかなって思い浮かべながら作って来てるしね。何かそういうことなんじゃないのかな。それが愛って言えば愛だし、当たり前のことのようにしてるけど。建物もお店もそうかな。愛がない人たちの店や会社は大体ダメになると思うけどね。人の出入りがないビルも気が澱んでくるしね。古い建物、特に寺社仏閣はそうじゃないですか?床とかピカピカでしょ。人を迎える準備を怠らない感じ。だから同じだなって。目の前に人を迎えるためにとか、今日来てくれるかもしれない誰かのためにって。

S: 名建築の問題って、今結構あって…。大事に使われている建物とそうじゃないものって、やっぱり違うんですよね。大事にされないとダメになっていっちゃうというか。

入った瞬間解るからなー。個人宅のリフォームなんかの時もわかるかな。

T: 歴史的な遺構を新たに復活させる取り組みも、それを使う側に愛情やその歴史に対する文脈がないとダメだよね。。

CU: あー、そうか…。そうかもしれない。

栗: 港は人を迎える仕事じゃないですか。どうなんですかね?

I: はい!太字で書いておいてください!仕事に愛を持って取り組んでいます!と。


◎相互の愛

I: 私が今回のテーマで考えていたのはですね。栗岩さんが町中に愛がないって言っていたじゃないですか。日常的に電車で移動をしていると突然倒れたりする人がいても、どうしても避けちゃうんですよ、私は。そういう時にすかさずいける人ってすごいなって思っていてですね。逆に知らない土地、海外とかでは困っている人がいたら何か気になって、いけちゃうとか。この現象はなんだろうなって。

栗: 日本では見て見ぬふりする人って多いしね。

I: かえってトラブルに巻き込まれたりするんじゃないかって。

S: 私が住んでいる町では、ついこの前、おじいさんが具合悪そうにしていたら、周りにいた人たちが、みんな寄っていって手当てしたりしていたかな。なんて温かい町なんだろうって思ったりして。東京との違いなのかな、やっぱり。

T: 周りにたくさん人がいたらいかないかも、私も。ひとりで道端に見つけたら別かもしれないけど。

栗: 人の目があるからじゃないのかな。誰かやってくれるかもって期待したり。残念のことだけど、人の目を気にすることってあるかもしれないね。

I: 私はひとりの時にでも恐いから遠回りして割けちゃうかもしれないですね。

YU: 僕は倒れこんできた人を手助けしたことがあったんですけど。その時ちょうど腰を痛めていて、なかなか大変な想いをしたんですよ。人を助ける時って自分の身の安全を確保出来ないとダメですよね、きっと。

T: 自分が直接手を出すよりも、駅だったら駅員に伝えるとか、そこまで想像出来て、自分が今はそこまでやれるであろうとか、この後どうしたら良いかって、頭の中で想像出来れば良いのかな。自分に余裕がないと、やっぱりダメだよね。

S: 無責任なことになっちゃうかもしれないし。

CU: 助けることと愛って何か違いません?今、聞いていて思った。人助けと愛は違うなって。

栗: 愛は感情でしょ、自分の。

YU: 感情で人を助ける気持ちがあるか、どうかですね。

CU: 助ける気持ちも愛?

栗: 助けるという気持ちは愛だよね。助けることは行為だけど。

I: 自分に余裕がないと愛する気持ちが持てないというのは解りますね。

助けられるかどうかっていうのも、関わったら予定に間に合わないとか、

早く帰りたいから出来ないということもあるかもしれないし。

T: 究極的には自分を愛せない間は人を愛せないよね。今目の前にいる身近な人のことも愛していなくて、地球への愛とか言われても、おいおい、みたいな。

F: そうですよね、ホントに。


◎自己愛

S: 自分を愛していないとね。

CU: 自分を愛するって具体的にどういう感情ですか?

S: 自分をこのままでいいって思えることかな。

T: イヤなものはイヤ、怒る時は怒る、それでいいと自分を受け入れるということかな。他人を慮って、他人の気持ちを考えて、自分の本来の気持ちを抑えてする行為は果たして愛なのか。

U: 相手にもあまり良いことじゃないんですよね、結果的には。イヤイヤ、他人を大事にしているというマインドになっているだけの気もするし。

T: 今日のテーマで思っていたのは、「愛すること」と「愛されたいと思うこと」について。

若い頃は愛されたいって思う気持ちが強くて、それが、どうしたらモテるか、そんな話しになっちゃったり。でもいくらモテる技術みたいなことを学んでも、愛されないってことはもう薄々わかってきていて。自分のことを愛していないと、愛することも出来ないし、愛されることもないんじゃないかと。

S: 自分にウソをつかない、とか、ごまかさないってことかな。

栗: 自分は結構ウソをつきまくってるけど。ウソで固めてきてる感じ。ウソっていうか奮い立たせる感じ。

T: それはやめたほうが良いですよ!

(一同笑い)

実際そうじゃないですか。私は奮い立たせなければできないようなことは、どうしたらやらないで済むかを考えるようになりました。

栗: それは仕事っていうより体力的なことですよ。歳を取ったなって。

T: 体力がないのをどうにか奮い立たせないと出来ないことがあったら、そもそも自分に合ってないんじゃないかって、そう思うようにしているかな。

S: チームで仕事をする人って、そういう方向になりがちだよね。

T:惰性にならないように気をつけてるかな。自分に対して余裕がないと、他人に対しても余裕が生まれない。

F: 何でもかんでも自分一人でやろうと良い人ぶると、自分を見失うことになるのかなって。

T: あまりいい結果を生まないですよね。

F: 自分を愛する、かー…。

YU: 自分はスタンスというかポリシーというか、それを決めてますね。

F: すごいですね。

YU: 自己愛ですかね、まずは。自分を最上にしておかないと、かな。

T: YU君がこれから出会う人が楽しみでならない。

YU: 気の合う人がいたら、そうですね。

T: それぞれの時間を自分で愛していて欲しいってことでしょ。それが前提で一緒に暮らしましょ、みたいな。

YU: そういうスタンスじゃないと一緒に居られないかもしれないですね。

S: YUさんは自分が出来てるからなー。相手に無理に合わせない感じだし。

YU: 合わせないですね、まったく。遊びたい時に遊ぶ、みたいな。


ー後編に続きますー