2023/04/25 10:00
ジョージ・クルーニーが走る。
よれよれのポロシャツ、短パン、ビーサンで。
転びそうになりながら、バタバタと走る。
オアフ島に暮らす、家庭のことを妻に任せきりだった弁護士マット。
妻エリザベスはレジャーボートの事故で意識不明の昏睡状態。
久しぶりに向き合う娘の反抗期の態度に戸惑うマット。
妻の看病をするなかで浮気の事実を知ることになり、
夫婦の親友のもとにヨタヨタと走るマット。
ダメな男のその姿。
(まあ、ダメな役を演じても格好良いんですけどね、結局…。)
仕事、結婚、夫婦、親子、家族、一族。
ハワイの大自然を舞台に描かれる映画「ファミリーツリー」。
そのラストシーンは、ソファーを分けあい、毛布を分けあい、
アイスクリームを分けあって食べる父親と娘の姿で終わる。
歳を重ねてきたからこそ、感銘を受けるこの映画。
考えさせられることが多く、記憶に刷り込まれている。
若い頃は全く想像することが出来なかった結婚。
誰かと共に生活すること、家族のカタチなど考えもしなかった。
それが今、家族と共に生きている。
守りたいもの、残したいもの、伝えたいものがあって、
たくさんの事が日々起こり、盛りだくさんの家族のカタチ。
今、それがある。
仕事帰りの深夜の帰宅。
明かりがひとつ灯り、ぬくもりが残る静かな部屋。
物音を立てないように静かにしながら一日を片付ける。
そこに家族がいるという事実に安心しながら。
誰もいない、真っ暗で寒々しい部屋に一人、
酔ってそのまま、帰ることがたくさんあった。
その頃に比べるとやはり、
帰る場所があり、そこに確かなものを感じながら、
また明日、と思えることに嬉しさを覚える。
頼りなく、不安定で、大きな幹ではないけれど、
強風に吹かれても、大雨に降られても、
揺らぎながらも、根を張って生きていきたい。
地に足つけて、軸足ぶれずに、しっかりと。
愛する家族のためにとか、そんなきれい事ではなく、
守りたいものがあるという、その事実を受け止めて。
大きな大きな木にはなれないけれど、
たくさんの実をつけることもないけれど、
倒れることなく、立ち枯れることなく。
少しずつ少しずつ成長し続ける木でありたい。
そんなことを思う春、東京の街角で。
令和五年 若葉潤う穀雨の頃に
栗岩稔
追伸、「栗岩稔と人間学/第四回-結婚って必要ですか?-」を開催します。
これまでの模様とイベント詳細は
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