2023/01/22 10:00

栗岩稔と人間学

〜序章〜

 

これからを生きる世代の言葉に向き合うことは、

先を生きる世代にも来し方行く末を考える時間となる。

 

「歳を重ねるって楽しい?」「幸せってなに?」

「働くってどういうこと?」――。

なんとなくわかった気になって、

立ち止まって考えたこともない疑問のあれこれ。

さあ、皆さんならどう答えますか?

 

「今」立ち止まり、「これから」の歩みのための語りの場を

世代を超えてつくり、拓く「栗岩稔と人間学」。

文筆家の卵、若干23歳の下川晴をファシリテーターに始めます。

 

昨年冬の某日行われた

序章の回のお題は「先ゆく人々に思うこと」。

年齢も性別も職業違う7人が集まりました。

ひとつの机を囲み、身近な人物、歴史上の人物、

それぞれ思い思いに頭に浮かべながら、

栗岩稔が淹れるウィンナーコーヒーを片手に、

議論の幕が開く…。

 

ファシリテーター

下川晴[ペンネーム:松下露伴(仮)] プロフィール

1999年、東京生まれ、小金井育ち。大学在学中、フリーライターの父の影響から雑誌媒体で記事を掲載。2022年大手IT企業入社後、9ヶ月で退職。小説家志望、駆け出しの人間。

 

 

―今回の参加者―

Tさん…40代、フリー編集者。家庭では一児の母

Eさん…20代後半、チョコレートを愛する精密機器の職人。

Fさん…30代後半、ITのベンチャー企業で活躍。キレのいい関西弁の使い手。

Uさん…30代後半、都内コンサルティング企業で活躍。自作のラー油が絶品らしい。

Iさん…40代、不動産ディベロッパーを経て、現在はコンサルティング業界で活躍。

 

 

先行く人々に思うこと

 

下川(以下:下):はじめまして。僕は、社会人一年目の年なのですが、2022年の末で勤めていた会社を退職しました。学生時代に雑誌媒体で記事を少し書いていたこともあり、将来的には小説家を志して、舵を切っていこうとしているところです、よろしくお願いします。さて、序章のテーマとして「先行く人々に思うこと」としました。“栗岩稔と人間学”を始めるにあたって、まずは、社会人に成り立ての僕が会社という組織に入って感じた違和感や、そこで見た人々への疑問など、ノート一冊分ほどの質問を、僕にとって先を行く人である栗岩さんに投げかけさせていただきました。128日から始まる本番では、その質問をもとに細かくテーマを決めています。今日はその序章ということで、「先行く人々に思うこと」と大きく捉えて、僕が栗岩さんに思い思いに疑問を投げかけたように、例えば、親や会社の上司、あるいは歴史上の人物など、みなさんにとっての先行く人々を思い浮かべていただきながら、自由に言葉を投げかけ合う場になればと思います。

 

下:さっそくですが、僕にとっての先行く人々は、漠然と、現代に生きる自分の先を歩くすべての人々と考えています。戦後77年ですけどれも、戦時中から、先人たちが命がけで今日につながる社会を作り上げてきた。でも今は、物資などが豊かになった分、正直、考えなくても生きていけるようになってしまったと思います。例えば、経済活動も社会で生きるためには自明のことです。僕はそのまま会社を辞めずに、現代の資本主義というシステムに疑問を持たず身を投じるだけで、その中で努力をすれば、生活していくためのお金を稼ぐことができたわけです。しかし僕は、決して共産主義ではありませんが、いわゆる“食べていくために仕事をする”ということが、どこか腑に落ちなかったんです。とは言いつつも、社会と縁を切るということは現状難しい中で、目の前にある社会とどうやって折り合いをつけて生きていけばいいのかということを、みなさんにお聞きしたいです。

 

U:僕は、都内のコンサルティング会社に籍を置いています。いまは昇進して、初めて部下を持って教育を楽しんでいるところです。僕は、会社員ってどうなんだろうと思ったことはあるものの、自分が生きていくために生計を立てる方法を考えることのほうが、面倒臭いと思ってしまう。別に独立したいネタもないし、やりたい商売がないということに気づいたんですよ。例えば、服とか、好きなものとかにお金を使って、それを楽しんでいくほうが合っていると思ったので、今は転職をして、サラリーを上げて、より楽しむようにしようっていう感じです。世の中のお金って、ほとんどそのシステムによって回っているじゃないですか、それに捕まる手はないなと。自分のスタイルに合わせて稼いで、例えばこういった場とか、好きなものに還元できるほうがいいかなと感じています。

 

E:僕は、群馬から上京して約10年間、腕時計の修理の仕事をしています。僕も今の職場は、定時で終わるんですよ。それでお金ももらえるっていう、これがすごい利点だと思っていて。栗岩さんの周りの自営の方を見ていると、今の僕のようなゆとりのある時間は取れないと思いますし。30歳になるまでは、その時間は絶対享受しようという考えですね。軸としては、もちろん、偉大な人物の名言を大事にしていることもありますが、こういう会で出会った皆さんの言葉が参考になることもあるので、何か一つしっかりとした考えがあるというわけではないですね…。

 

I:私は、元々は不動産ディベロッパーで、大きい建物を建てるような仕事をしていて、それで8年前からコンサル業界に勤めているという経歴なので、業界も職種も変わっています。だから、Eさんのように、迷いなく進める仕事に出会えるということは幸せなんじゃないかな、と私はすごく思いますね。

 

F:僕は、俗にいうIT系のベンチャー企業に勤めていて、毎日働いて、栗岩さんのbar に行って、というような日々を繰り返して今に至るという感じで。Eさんのような生き方をできている人って、それがいいか悪いか別にしても、あんまりいないですよ。何かしら妥協点つけたりして生きている人が多いですから…。

 

U:年を経るごとに、モチベーションを保てるものって、そうそう見つからない、というか、ないってことを自覚するんですよね。

 

F:自分も29歳で転職しました。きっかけは、もともと働くのがすごく好きで、世の中に価値提供したいという強い思いがあったこと。当時400人くらいの規模のITの会社を辞めて、当時5人で立ち上げたベンチャーに入りました。なんでその5人のところを選んだかというと、綺麗事かもしれませんが、日本を再生したいみたいな思いがあったんですよね。高度経済成長時代に、僕のおじいちゃん、おばあちゃん世代が汗水流して、必死で働いてつくった日本が、今すごく弱くなってきているという大義名分で、それをもう一度僕らで、高度経済成長期のような勢いのある日本を取り戻そう、みたいな心意気があった。僕は、別に会社の事業内容に惹かれて転職活動をしたわけじゃないけれども、日本再生の心意気は、一つのモチベーションになっていますよね。

 

栗岩(以下:栗):Uさんはさ、三国志を全部読破していると話してくれたことがあったじゃない? 歴史を参考にすることはあるの?

 

U:うーん。創作小説なので、時代背景とかは参考にしていないですけど、三国志のように、組織が出てくる物語って、場面場面で、トップから兵隊までいろんな人の心情がフォーカスされるじゃないですか。だから、何年かに一回読み直すと、会社の組織の中でのその時の自分のポジションによって、心境、境遇だったり、作品中のフォーカスする場所が変わって、その都度自分に照らし合わせながら、考え方や、部下への接し方、嫌われ方とかは参考にしていますよ。

 

E:僕が参考にするのは身近な家族ですね。2世代くらいは知っているわけなので、影響は受けているなって思いますね。僕がいま29歳で、ちょうど親が僕を生んだくらいの年齢になったので、あのときどうだったんだろうとか、思い返すたびに、そこでためになるというか。多分思考が似通うんだと思いますね。

 

栗:Eさんが出してくれた親というものに対しては、うちの親はすごく真面目で、百貨店のアパレル系なんだけど、勤続55年で地元の商工会議所から表彰されるくらいだったんですよ。で、自分はどこかで唾を吐いていて、絶対同じ仕事したくないってずっと思っていたのね。でも、あるとき親父に、おんなじ仕事してるじゃんって言われたときがあって。ということはつまり、どこかで参考にしていたんだよね。もちろん、こうはなりたくないっていう参考にもしていたわけだし。身の回りの人たちという意味では、若い頃のバイト先のおじさん、おばさんたち、お姉さん、お兄さんたちから、「生きるって?」「働くって?」ということを学んだかな。深夜の弁当屋の工場とか、昼間稼ぎがないから夜も働いています、みたいな。バツイチで子供寝かしつけてから来ています、みたいな。自分は幸い、そういう人たちと関わることができたので、生きるってなによって思っちゃったんだよね、18歳のときに。

 

栗:先行く人という意味では、本を読んで、参考にしている人はいるよ。そのままなぞるわけじゃないけど。例えば、思想的にはエリック・ホッファーだったり、日本だと、歴史から学んでいるかな。所詮、人間なので歴史は繰り返すと思っているので。でも歴史って、勝者の歴史でしょ? 自分は敗者を見るようにしていて。例えば、明治維新というけど、あれは別に新しくなっていなくて、薩長革命なのでは?とか。見方を変えて歴史を学ぶことも、今に生きてくるよね。

 

 ー続きますー


 

「栗岩稔と人間学」 information

<日程&テーマ>

開催時間:1月〜6月最終土曜日 各回とも13:0015:00

参加費:¥3,000(美味しい珈琲付き)

場所:GOTTA STUDIO KUDANSHITA

東京都千代田区九段南2-2-8松岡九段ビル201

 

第一回 128日(土)

歳を重ねるって面白いですか?

 

第二回 225日(土)

人生に過去問は必要ですか?

 

第三回 325日(土) 

働かなきゃだめですか?

 

第四回 429日(土) 

結婚って必要ですか?

 

第五回 527日(土) 

認められる大人ってなんですか?

 

第六回 624日(土) 

幸せってなんですか?

 

※老若男女問わず、人数に上限は定めませんが、参加申し込みのお問い合わせは

mineosha@icloud.com(竹田)までお願いします。