2022/12/20 10:00
「人生の過去問いは必要ですか?」
これも来年から始まる新しい試み
「栗岩稔と人間学」のテーマのひとつ。
https://www.kuriiwastyle.com/blog/2022/11/01/100000
若い時は過去も何も、ただ前を向いているしかなく、
「今」を生きていて、楽しくもあり、苦しくもあった。
歳を重ねた今だから、重ねた分を振り返ることが出来て、
反省して、赤面して、苦笑いもする。
必要かどうか、と聞かれたら、
「必要というより、必然ですよ、振り返ることは」
と答えることが出来る。
積み重ねてきた年月、積み重ねてきた人との出会い、
そんなことがあって「今」があるのかな、と。
若い時には、こんな風に考える自分など、
想像すらしていませんでしたが……。
大好きな映画がある。
1994年にNYタイムズ誌に掲載された実話をもとに、
デヴィット・リンチ監督が描いたロードムービーの名作
「ストレイト・ストーリー」。
アイオワ州の片田舎に暮らす73才の頑固な老人アルヴィン・ストレイト。
ある日、彼の兄が病に倒れたという報せを受ける。
10年来、些細なことから仲違いをしていた兄に会うため、
時速8kmの小さなトラクターで560kmの旅に出る物語。
その中で若者に混じって公園でキャンプをしている際に、
若者からの歳を重ねることについての質問を受ける。
「年を取って良かったことは、
経験を積んで実と殻の区別がつくようになったこと。
最悪なのは、若かった頃を覚えていること」
と、アルヴィンの言葉。
名言だなと、今改めて言葉の意味が腑に落ちる。
そんな彼がたくさんの人の力を借りて、
ハリー・ディーン・スタントン演じる兄ライルに再会する。
彼の住まいの山小屋で、星空の下で、
言葉を省いた「目」の演技のラストシーン。
いや、本当に名作です、この映画。
大好きだった映画がある。
数年前の訃報に悲しさを覚えたハリー・ディーン・スタントン主演、
大好きな映画監督ヴィム・ヴェンダースの映像美、
大好きなミュージシャン、ライ・クーダーの音楽で綴られる
「パリ・テキサス」。
自身の過ちを正すため、
4年前に失踪した妻を求めてただ歩き、
テキサスにある自分のルーツの大地、パリを目指すロードムービー。
言葉を失い、人との関係を絶ってまでもひたすら歩き続け、
再会を果たすものの、何かを求めて、彼はまた旅に出る。
若い頃は大好きだったこの映画、今はだいぶ見方が変わってきた。
これもまた、歳を重ねた答え、ということかと。
どちらの映画にも描かれている大きなテーマが「家族」。
やはり、そこだと思う。
この師走から正月に向かう頃、
何年も顔を合わせることが出来なかった、
年老いた両親を想い、故郷の山を想う。
何故か突然思い出す、松任谷由実「あの日に帰りたい」
もちろん、「あの日」を猛省しますよ、たくさん、たくさん……。
あ、でも「あの日」や「あの頃」とかに戻りたい、
などと、これっぽっちも思いません。
だって、戻ったらまた、何十年ですよ、何十年。
あと何回の正月、とようやく数えられるようになったので。
苦笑いが心からの笑いになりますように。
令和四年 福笑いの時節を前に
栗岩稔