2022/11/08 10:00

「幸せーって、何だっけ、何だっけ。

ポン酢しょうゆのある家さ」

明石家さんまさんの

上手とは言えない唄とぎこちない振り付け、

消すに消せない

刷り込まれたテレビコマーシャルのひとつ。

 

「幸せって何ですか?」

という問いかけがあった。

もちろん、その時も頭の中には

明石家さんまさんが浮かんだものの……

人が生きていく上で投げかけられた

真面目な概念の話しです、はい。

 

正直なところ、未だにわからない。

わからないというよりも

明解な答えを持つことをしない。

ただ、その時々の感動や喜びや

心の震えがあって、

それを「幸せ」と言うのであれば、

それが「幸せ」な時で、

ひとつでも、いつかどこかに、

何かそういう時があればと。

 

例えば、戦前からある

老舗ビヤホールで昼のビールを楽しむ時。

食事代わりのソーセージと

ザワークラウトにジャーマンボテト。

調子に乗って、

中ジョッキ2杯でほろ酔いの午後。

日没前のガード下、

コートも脱がずに煮込みとモツ焼き。

調子に乗って、

ウーロンハイ2杯でほろ酔いの夕暮れ。

銀座の真ん中、

バールのバンコで祝杯という名のスプマンテ。

例えになっているかどうかは別として、

こんな時間もまた幸せな時、とも思う。

 

目線を変えれば、

隣国の理不尽な事故と不可解な挑発、

ユーラシア大陸の消えることのない

火種と消え入りそうな連帯。

牽制しあい主導権を奪い合う

アジアの大国と北米の大国。

そして、ボンヤリと重たい空気に覆われた日本。

そんな中でも、一人一人に

ほんの僅かでも一瞬でも、

幸せな時があるはずだと思うし、

そうであって欲しいと思う。

 

幸せの概念というものを

万人共通で持っているわけでもない。

隣の芝生は青い、のような

誰かと比べた生活、経済的なモノ、

そこに幸せを見出だす人もいるだろうし、

それが正しいかどうかもわからない。

 

今生きているだけで幸せと

言えるほどの度量はないし、

今のために必死に生きている。

 

結局、思うところ、

人生の最期の時にどう思うかが大切で、

その瞬間に笑っていられれば

幸せな人生なのだと思うし、

苦悩したまま終われば

そういう人生だったのだろうと思う。

だから、最期の時に笑っていられるような

生き方をしていきたい。

 

久しぶりに思考の深いところまで

落ち込んだ気がするものの、

それを苦にするわけでもなく、

考えを巡らせながら今日も歩く。

 

そんな時間もまた楽しめるし、

そんな時間を持てることが幸せかと。

 

冷たく乾いた空を眺めながら口ずさむ、

「幸せーって何だっけ、何だっけ~」

これもまた幸せ、あれもまた幸せ、

あっちもこっちもどこかでも。

 

令和四年 ポン酢沁み入る立冬の頃に

栗岩稔