2022/09/13 10:00

何かの健康食品の宣伝のようだが

足腰の衰えを防ぐためによく歩く。

サプリメントなどに頼ることなく、

ひたすら歩く。 

銀座から九段坂、銀座から人形町、

新橋から日本橋、 勝鬨橋から永代橋、

もっと先の松尾芭蕉が暮らした新大橋。

歩ける範囲で仕事をするなどと

嘯いているほどに歩く。 

 

歩く速さが好きだ。 

歩くこと自体、この大都会を深く知る上で役に立つ。

もちろん、時は金なりという言葉が

似合いの街であることも事実だが。 

 

何気なく、古いSF小説を読んだ。 

1953年発表のレイ・ブラッドベリ著「華氏451度」。 

本の所持、読書が禁じられた近未来の架空の社会で、

ゆっくり歩く人は変人で全てに早さを求められ、

余計な思想、思考、記憶を完全否定し、

相互監視、密告が推進される世の中。

燃えないように作られた家にある本、

余計なモノを全て燃やすファイヤマン。

現代では消昉士、小説の中では燃やす立場の昇火士。

この役目に疑問すら感じていない主人公がある日、

ゆっくり歩く少女に出会い、何かに気付き変化していく。 

現代に通じる何か漠然とした不安を感じざるを得ない小説。

未来を予見したかのような内容に恐怖すら感じた。

だから、また歩いた。 ゆっくり歩いてみた。

突然、唄を思い出した。 

 

あるこう あるこう 

わたしはげんき 

あるくのだいすき 

どんどんいこう 

さかみちトンネルくさっぱら

いっぼんばしに~

 (井上あずみ/さんぽ

 

何だか、少し安心した。 

 

令和四年 一本の大きな橋の上の秋空に

栗岩稔