2022/08/02 10:00
栗岩稔的酒場の流儀 回顧編
8月になると思い出す。
週に一度あるかないかの休日、
夏休みなどもってのほか。
山里から上京して初めての夏。
海無し県に育った身としては海水浴は夏の一大事。
早朝から3時間近くかけた車の旅。
東京に居れば、電車で一本、日帰りカンタン。
車内ビールも問題無し。
テレビでしか観たことのなかった
憧れの江ノ島に向かった。
朝一番の列車に乗る。
前日のハードワークと
酒の疲れを車内睡眠で補う。
まだ土産物店すら開いていない商店街を抜け、
射的、スマートボールの看板に惹かれながら先を急ぐ。
海水浴場を見下ろすマクドナルドで
ソーセージエッグマフィンを食す。
橋の向こう側の江ノ島を
眺めながらの朝食にひとりほくそ笑む。
気の早い海水浴客を横目に
島に向かう橋を歩き出す。
途中、遊覧船とは名ばかりの
漁師が運行する小舟で島の反対側に向かう。
海面すれすれで波に揺られながら
岩屋洞窟から文字通りの上陸をする。
島の散策途中に茶店でビール、
つまみは海風。
島の漁師が船を停泊する入江に降りて
岸壁で昼寝。
寝不足、酒酔いを補う睡眠を貪り、
昼の太陽に起こされる。
ビールか日焼けかわからない
赤ら顔で散歩再開。
島を後に橋の途中のおでんの屋台の暖簾をくぐる。
あまり冷えていない
キリンラガービールが心地好く喉を潤す。
だいこん、こんにゃく、ゆでたまご、さざえは避ける。
店主曰く地元産のつぶ貝で締める。
今にして思えば相模湾でつぶ貝?
とも思うが、旨かった夏の記憶。
8月になると思い出す、30年前の夏の記憶。
漁船に乗り、島の散策、茶店でビール、
締めるは真夏のビールと熱々おでん。
昭和の演歌的休日の一日、
頭の中に流るるはやっぱり憧れ、
サザンオールスターズ。
山を見ながらのサザンより、
海で聴くサザン、
歌詞にも出てくる江ノ島でサザン。
帰りの電車も、もちろんサザンでほくそ笑む。
帰りの電車も、酒酔い睡眠、
江ノ島づくしでお腹いっぱい赤ら顔。
数少ない休日を満喫した真夏のおでんの酒場の記憶。
令和四年 今はしません車内呑み
栗岩稔