2022/07/05 10:00
栗岩稔的酒場の流儀 その二
その一はこちら
→https://www.kuriiwastyle.com/blog/2022/03/22/100000
空梅雨が早々と明けた旱暑の夕暮れ
街の照り返しと人の数で
熱が彷徨うスクランブル交差点
俗に言う初めての「差し飲み」に
期待と不安が入り交じる
酒場に公私の分があるとしたら
「私」の酒場、
季節違いのいつもの酒場
煙が漂う中で席に着く、
炭と人と街の熱で暑すぎる夏の酒場
ありがちな「まずはビール」
「とりあえずビール」をあえて避ける
水分不足の体内にいきなりのビールは疲れのもと、
と何かの本を思い出す
いつもの美味しいビールのために
少しの我慢のウーロンハイ
熱々煮込みと
酸味を効かせて芯まで漬け込むキャベツ漬け
水分が戻った身体に
血と肉補給のレバー、ハツ、カシラ
機械的に冷やされる身体の芯を温める
串の焼き手もまた耐える熱、
おかげで強まる塩加減
塩分過多にならないように
氷多めに次のウーロンハイで会計を待つ
夕陽で赤いか酒で赤いかわからない頬のまま
まだ陽が残る街中を抜けていつものビルの最上階にたどり着く
注文してからの用足しや席に不在は失礼千万のカウンター
腹八分目で満たされた身体に
待ちわびたドラフトビール
ひと口目のグラスに残る
相変わらずの泡のリングに惚れ惚れする
旨いビールの鉄則は注ぎ方はもちろん、きれいなグラス
グラスの底から沸き上がる泡は汚れの証、
きれいな境目、金と白
そんなことを改めて思いながら眺める
5本のリングが残るグラス
連れのグラスの進み具合を確認しながら
次にいただくスコッチ&ソーダ
調子に乗らずに、夏はピーティ
スコッチ&ソーダ
今宵もまた締めて3時間の良い時間
余韻を残して、記憶を残して、体力を残して…
最後に手渡すペットボトルのミネラルウォーター
夏夜の酒を共にした友の道中、生命の水
高校の文化祭準備の徹夜明け
汗がビール臭かったことを思い出す
時効、時効、時効…、時候の酒場
令和四年
暑さ寒さも彼岸までには程遠い夏のはじまりに
栗岩稔