2022/03/22 10:00
栗岩稔的酒場の流儀 その一
季節が後戻りしたような早春の夕方
20年以上通うガード下のもつ焼き屋に向かう
煮込み、カシラ、タン、ハツ、キャベツ漬けにウーロンハイ
次の店の旨いビールのためにビールの腹は空けておく
いつもの流れを想像しながら、久しぶりの味に期待する
思いがけない冷え込みに煮込み、良い夜のはじまりの予感
冷たい雨風を避けてガード下に急ぐ
いつもの灯りが洩れていないガード下
足早にたどり着いたその先の、あろうことかの休業中
改めて世に蔓延するウイルスの影響を体感する
振り返るといつもは入らなかったもつ焼き屋
出鼻をくじかれ、半ばあきらめの肌寒い夕暮れのはじまり
向かい合わせの店では、明かりが灯り
明るく元気な声と洩れ出す匂いに誘われり
吸い込まれていく初めての透明のカーテン
煮込み、カシラ、タン、ハツにおすすめされた生ビールの飲み比べ
きれいなグラスの証の泡立ちの生ビールに期待膨らむ
まず煮込み、丁寧に下拵えされた具材に染み込むあっさりした味わい
カシラ、タン、ハツの塩加減と焼き加減にビールがすすむ
順序を変えて、まさかのウーロンハイ
ごまかしの氷は無しの、しっかり焼酎、しっかりウーロン
〆にキュウリとエシャロット、添えてあるのはもろみ味噌
それだけでもう一杯、を留める余韻
腹八分、満足十分で店を出る
選択肢が広がった、冷え込みに煮込みで夜のはじまり
歩いて5分の酒場に向かう
エレベーターで最上階に上がる
すぐに洩れ出す心地好い音と黄色い灯り
扉を開けるとなじみの顔といつもの景色
口が欲するバーボンソーダ
必要最低限の会話、酒と音でのコミュニケーション
心地好い時間にすすむバーボンソーダ
連れの仲間の進み具合も確認しながらバーボンソーダ
とても大切な酒場の流儀
人の話を聞き、音を聞き、店の空気を聞き入れる
流れる曲のメッセージ、周囲の人の佇まい
店の中での自分の立ち位置、仲間の中での自分の立場
奢らす、でしゃばることなく、然り気無く
2杯目あたりでペースが変わり
バランス確認バーボンソーダ3杯目
次、という言葉を抑えて、腹八分、満足十分
酒場では
やってはいけない、長っ尻
やってはいけない、しゃべりすぎ
もちろんダメです、飲み過ぎは
締めて3時間の良い時間
令和四年 暑さ寒さも彼岸までを痛感した夜に
栗岩稔