2022/02/10 15:54
内容はもとより、美しい画、美しいカタチ、美しい言葉
それが良い本だと思う
写真集[bar sowhat 2011-2021] が出版された
この本は、銀座木挽町路地裏の小さな小さな酒場
bar sowhatの終焉を捉えた写真家 木内和美さんの
光と影とその眼を感じ
その写真が生み出す本のカタチを想像して創造した
グラフィックデザイナー 澤田明彦さん
そして言葉は恥ずかしながら酒場の主の私
我ながら良い本だと思う
元来、書店というか書棚が好きで
まず背表紙のタイトルに惹かれ手に取る
内容はもちろん、紙質、装幀、手触り、手心地から
購入に至ることが多い
なかには本から流れ出てくる音があるものもある
好きなものが一体で感じられる本に出会った瞬間
ひとりニンマリさえする
かねてから本と音楽が一緒に表現されているものが
あったら良いなと思っていたし今も思っている
本がより立体的な表現になり眼と耳で体感できたらと
好みが強すぎることから生ずる欲ではあるものの
そんな本が欲しかった
幸いなことに今回出版された写真集では
出版記念展として銀座一丁目の森岡書店において
写真展とともに展示販売の初回限定版には
選曲家であり音楽ライターであり
共にラジオ番組パーソナリティーを務める
大塚広子さんが選曲した音源(無論栗岩稔監修)が
期間限定購入者限定で提供されている
以前「木挽町音楽酒場」というイベントでもプレイし
路地裏の景色、酒場の空間を知っている選曲家が自ら
選曲してくれた音源と
美しい画、美しいカタチ、そして言葉
想い描いていたカタチがひとつ完成した
この場で名前が出てこない関係者の方々
たくさん支えてきてくださった皆さまへの
深い感謝の念に堪えない
銀座の片隅で旧木挽町の古くから残る路地裏に
ポツンと空いた小さくて四角い空間に初めて出会い
この路地に酒場があったら良いなと思った十余年前
何もない空間で想い描き連ねた手書きのイラスト
客用入り口と勝手口を分けた店舗正面の酒場の顔
勝手口から覗く酒場のカウンターの景色を想像し
カウンター越しに繰り広げられる人間模様を想像し
古いラジオやモノクロ映画のような酒場を想像した
10年しかできなかったものの
その最後の景色がカタチで残り記憶に残る
こんなにうれしいことはない
今また新たな始まりではあるものの
まずは、すべてのみなさまに
ありがとうございます
そういえば、あの頃真剣に映画制作に奔走していた
自身に足りないものが多くありすぎて断念した
画、モノ、カタチ、言葉、音楽の全てが揃う総合表現
その中のひとつが映画だと思う
次は、いや、いつかは映画、かな
令和四年二月はじまりの時に
栗岩稔
photo: Kazumi Kiuchi